連載小説
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そうだ!宝ヶ池に行こう!
 お風呂で疲れが取れるどころか、倍になってしまった私が起きたのは、翌日朝8時ピッタリだった。
 体が覚えているのか、必ず毎日起きるのはNHK朝の連ドラの時間だ。思えば「おはなはん」「渦潮」「たまゆら」の時代からもう80年くらい経つのだろうか。
 私が目を覚ました後、必ず1分でアグネシュカも気が付くのだが、それからの約1分間が私のひそかな楽しみでもある。
 完全なモードになるまでの間、まるで寝ぼけているようなアグネシュカの仕草が可愛くてたまらないのだ。
 寝るときは私の方が彼女より5分早いので、決してアグネシュカの寝顔を見る事はないが、朝は見れる。
 「全く!山さんったら〜。」後ろから鷲づかみにした私の手を軽くつまみながらニコッと笑って嬉しそうに彼女が言った。
 山さん?どうやら轟の影響らしい。まっいいか、歴代の妻達もみんなそうだったし・・。
 「アグネシュカ、今日は自然と戯れに行くかい?」京都は東京や大阪と違い平野でなく盆地なので、大文字焼きで分かるようにすぐそばに山がある。
 「よぉし、行くか!」2人が向かったのは宝ヶ池である。ちょうどいいハイキングコースがそこにはいくつかある。
 無料駐車場に止めた2人は、今では珍しくなった手漕ぎボート乗り場を右手に、宝ヶ池の周りを歩き出した。
 11月終わりの池にはいつでもいる鴨のほかに、シベリアからの珍しいおしどりを30人くらいの素人カメラマンらしき人達がレンズに収めていた。
 ふとアグネシュカは1本のキノコを見て足が止まった。「・・・マシラキ・・・」「山さんこれ食べられるよ!取って帰りましょうよ!」
 なんでそんな事知ってるんだろう?食べる気などもうとうないが、さして気にも止めずいい加減な返事をしておいた。
 こんな季節に山に登る人なんかいないだろうと思いながら、2人は持ってきた軽いお弁当を食べる為、見晴らしのよい山頂に向かったが、やはり道中誰にも出くわさなかった。
 くしくもこの時、前にもどこかであったようなスケベなたくらみが私に湧きあがってきたのだった。
10/11/30 21:30更新 / アンバー
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■作者メッセージ
ひょっとして、何するの?

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まろやか投稿小説 Ver1.53c