連載小説
[TOP][目次]
アグネシュカ、蘇生。
 彼女はベットの上で背筋をまっすぐに、まるでおとぎ話のシンデレラのように冷たく横たわっていた。こんな場面でキスをするのはたいがい王子様と決まっているのに、こんなおっさんでも許されるのか?
 1回のキスで、本当に気持ちがつながるのだろうか。はたして最初から私を好きになってくれているのか?全ては彼女のプログラムを信じるしかなかった。こんな時に、疑心暗鬼になっても仕方がない!
 よーしッ!いくぞー!3・2・1・・・チュ!・・あれ?・・チュー!・・・そしてもう一度キスをしようとしたその瞬間、瞼の下の瞳がかすかに動いたような気がした。
 今のキスで、彼女は私のDNAを正しく認識してくれたのだろうか?JHCの研修では蘇生にはおよそ30分かかると聞いていた。
 暫くすると、その青みかかった白い肌は少しずつ赤みを帯び、また人口皮膚からも血管のような筋がほんのりと現れてきた。
 随分昔3度目の妻で、長男の出産には付き合わされた事があったが、なんだか似たような気がする。軽く握った手にも、少しずつ確実に暖かくなり始めてくるのが伝わる。
 わぁ〜どうしよう!たいがいの事には動じない私だったが、年甲斐もなく心臓がドキドキする。デスマスクのようだった顔が次第に寝顔に変わっていく。
 しまった・・やっぱりはかせた、ひも付きの下着はちょっと下品だったかも?今のうちに取替えなくっちゃとスカートに手を入れるが、すでに暖かかった。
 ま、いいかこのままで。久々の修羅場のような30分がとても長く感じたが、ついにその時が来た。
 長いまつげの彼女は、突然目をパッチリと開けた。ブルーだ!しばらく女ターミネーターのように目と首を廻しおそらく状況を収集していたのだろうが、おもむろに立ち上がった。つられて私も向かいあったその時、なんと彼女はいきなり私にキスをしてきたのだ!と言うより舌を入れて私のDNAと目の前の男が一致するのを確かめているのが何となく分かった。
 そして次の瞬間彼女の顔から不安や疑いが一切消え、初めて優しい笑顔に変わった。そして今度は自然と互いの目を見ながら、愛のある最高のキスへと変わったのだった。
10/10/12 21:22更新 / アンバー
前へ 次へ

■作者メッセージ
僕の、アグネシュカだ!

TOP | 目次



まろやか投稿小説 Ver1.53c