連載小説
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彼女、誕生!
 いよいよデートの日はやってきた。お気に入りのエンジのベストはクリーニング済みだ。当時はヘルメット着用は義務ではなく、遠出というより、ラフなスタイル。
 10時に高井戸駅で待ち合わせた僕は、すぐそばで今日の作戦を復唱しながら、時間調整をしていた。ぴったりに駅に着けた僕は、彼女の超ミニスカートに目が釘付けになった。バイクにどうやって乗るというんだ。心配する僕を横目に、彼女は乗り慣れたかのようにステップに足をかけ、横すわりで僕の後ろに座った。彼女の手が僕に回る。ドキッ!
 さっ、行くぞ!目指すは奥多摩湖だ。時々わざと、きつめにブレーキをかけるが、なんだか背中に期待の感触がこない。どうやら、あまりないなっ。でもまっいいかっ、大人になりかけのムッチリした太ももはまさしく僕好みだ。
 奥多摩湖に着いた僕は、2人っきりになれる場所を探し始めた。バイクを止め川原に下りるとちょうどいい岩陰に並んで座れる所を見つけた。ここまで順調、いよいよ作戦開始だ。のり付け封印された日記の場面を思い出し、一気に彼女の唇を奪った。悪ぶった演出と年上、何より浜田山での経験がここで大いに役に立ったのだった。
 実は以前高校1年のころ、坂東君の紹介で1つ年上のお嬢さんとデートした時のことを思い出した。四谷の土手で、彼女が僕の唇まであと5センチの距離で息を何回も吹きかけて挑発してきたのに、勇気を出せずにキスできなかった苦い経験。何事もヤッパ経験が大切なんだなと痛感した。
 2人はこれからも付き合っていく事で合意、めでたく僕の彼女になりました。安心した僕は胸ポケットからLARKを取り出し、大人の余裕を示すべくおもむろに吸った、というより吸えるフリをして吹かした。
 とりあえずを作戦成功させた僕は更なるステップを目指し、その夜もまだ醒めやらぬ記憶を日記帳にしたためるのであった。
10/09/04 17:30更新 / アンバー
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■作者メッセージ
早く、(やりたいなっ!)。

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まろやか投稿小説 Ver1.53c