連載小説
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いよいよ「初恋、撃沈」
 中学生になった僕は、まず言葉の壁にぶつかった。たまたま担任が国語の先生だったのも不運?授業中、いつも読まされては大阪弁を直された。おかげで早くに、標準語をしゃべれるようになったが、3つ上の兄貴はしばらく大阪弁から抜け出れなかった。 
 当時、関西では中学入試に社会がほとんどなく、国語、算数、理科の3科目が大勢だったおかげで、社会はいつも赤点だった。反面、理数は大好きで、幾何の時間はほとんど僕と笹本の2人がしょっちゅう黒板の前で大活躍していたのだ。 
 そんなこんなで意外とクラスでも異色の人気者の僕だったが、恋愛となればまた別だ。初恋というものは初めて、異性に興味を持ってひかれるだけで、決してその先の具体案はない。ただ、一緒に登校したりせいぜい家に遊びに行くことくらい。お母さんに紹介されて、美味しいケーキや紅茶を飲んで、礼儀正しく帰るだけ。私も当時は、それ以上のよろしくない欲もなく、それを漠然と望んでいた。
 好きになったのは高橋ゆう子だ。やや長い髪で少し色黒、腰ミノのフラダンスが似合いそうなエキゾチックなタイプ。同じ杉並区だが、通う線が違う。たまたま、当時何故だか息の合った親友の坂東君に相談した。親は医者で、当時でも珍しい外車プリムスに乗っていた。余談だがなんと人生今まで一回しか見たことのないペチカが家の中にあったのだ。僕は彼に自分の気持ちを打ち明け、彼女の写真を取りたいと話した。すると、彼はいいんじゃない、お願いしてみたら?と助言。
 勇気づけられた僕は彼女に電話した。勿論、下書きの原稿は何十枚も書き直した・・・。「いいわよ!」え〜っ!そんな返事が帰ってくるわけがないし、当然、逆を覚悟してたのに・・・。あ〜っ!神様って本当にいるんだな〜!し・あ・わ・せ〜!
 当日、僕はいつものMG5を少し多めに、完璧な7.3を決めていた。朝の登校前のデート、写真機もVANのバッグに入れたし、吉祥寺からタクシーでもいいようにお金も持ったし・・・。
 現れた彼女はいつにも増して綺麗で、髪の毛を左右2つに束ねたリボンはまるで結婚式のようだった。いつもより早い時間のバスに乗った二人は、お互い緊張のせいか、作り笑顔に間が持たなかった。学校に着いた2人は、まだ登校生徒の少ない場所で写真を取った。なんの構図や背景も考えず、ただ彼女を取りたかった。なんて、最高!〜〜〜高橋ゆう子、だぁ〜い好き〜!やった〜彼女ができた〜!!

 しかし、人生そんなにあまくなかった!その時、まさに親友、坂東君と高橋さんはすでに付き合っていて、かわいそうだから写真ぐらい取らせてやったらって・・・それはないでしょ!ダブルパンチで余計に傷ついた青春の1ページ。当然、フィルムは現像する前に太陽にさらしました。くっそーっ!!!
10/09/03 20:42更新 / アンバー
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■作者メッセージ
本格的な性に目覚める 「ワぁッ、お〜!」

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まろやか投稿小説 Ver1.53c