連載小説
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こんな僕なのに、愛されていた・・・。
 加奈子の強い押しに、ご両親と会うはめになった僕は、2度の離婚暦を話したが、本当の事などは話せる訳がなかった。
 女系家族の壬生沢家では、代々男は生まれず、まだ結婚してない3つ年上の姉もいた。
 次男だった僕たちの結婚は、2つ返事で認められ、できるだけ早くするように言われた。いきなり、式は3月だ。あと4ヶ月しかないのに、どうやって離婚すればいいのだ。
 イスラム世界でもないのに、まさか妻を2人持つ事はできない。
 年も開け刻々と時間が過ぎていく折、和世から飛び出して初めて、電話がかかってきた。
 「会って話したい事があるんだけど・・・」なにやら意味ありげだったが、今さら拒む理由もなかった。
 復縁を迫られても、もう今の僕には敷かれたレールを曲げる事や、まして折る事などできるはずもない。
 その上「離婚のハンコ」の人質を取られている僕は、和世を変に怒らす訳にもいかなかったのだ。
 池袋のショットバーで会った二人は、9年間も付き合っていたのにもかかわらず会話に詰まっていた。
 暫くして和世がふとつぶやいた。「月に1度帰ってくるだけでもいいから、このままでいたい。」・・・そして「Oさん!愛してます。」
 うわぁ〜、どうすりゃいいんだ・・。返す言葉も無く、僕にはただ下を向いてひたすらお酒を飲むしかなかった。
 結局何が言いたかったのか、よく分からないまま小1時間が過ぎた。
 帰り支度をすました和世は突然、「Oさん!お誕生日、おめでとう!」と無理な作り笑いで、派手なリボンの包みを手渡すなり、駆け足で店から出て行った。
 箱の中にはなんと!ハンを押した僕たちの「離婚届」が入っていたのだった。
10/09/18 19:00更新 / アンバー
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■作者メッセージ
ごめんねっ!ゴメン!和世〜っ!

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まろやか投稿小説 Ver1.53c