連載小説
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まだまだ、修羅場だ!
だから嫌だって言ったのにィ・・・「時が解決するから、もうちょっと待って!」と何度も言ったが、その時すでにアラサーだった加奈子には、もうこれ以外のタイミングでの結婚は考えられなかったのだ。
 混乱した和世は鬼のような顔つきで暫く黙っていたが、その次の信号で止まった時、いきなりドアを開けて飛び出した。急いで強引に連れ戻したが、周りの目など気にする余裕もなかった。信号で止まる度、繰り返した和世は、完全に自分を失っていた。
 やっとの事でマンションに戻った和世は、しょぼくれたと思えば、上品な彼女の口から想像できないような罵声を浴びせたり、僕には延々と続く地獄の針ムシロだった。(当たり前だ!このバカものーっ!)
 ようやく収まりかけたのはもう12時を過ぎていたが、今度はうわ言を言い出した。「象さんが空を飛んでる〜。」え〜っ、どうなっているんだろう?この言葉は、聞いた事のない罵声よりはるかに僕には怖かった。
 不思議にも和世は、事の経緯について一切聞こうとはしなかった。が何故だかもう5年も前のあの事件、まゆみといた笹塚マンションでの事だけ聞かれた。
 どう心に引っかかっていたのか知るよしもないが、改めて「あれは本当に細川さんに貸したんだ。」果たしてこの嘘が、和世にとってよかったのかは分からない。
 そんな毎日の繰り返しはとうとう耐えられなくなり、僕はマンションを飛び出した。このままでは二人とも鬱になる。池袋から程近い東十条に僕はアパートを借りた。
 冷蔵庫に洗濯機、必要な最低限のものは加奈子と一緒に買い揃えた。新築のマンションはまるで加奈との新婚生活のようだった。最初は慰めてもくれたが、だんだんと強引に結婚へと引っ張られていった。加奈子は自分の両親に結婚の挨拶をするよう僕を追いたてた。だってまだ、離婚してないのにィ!
 優柔不断な僕の性格を知っている加奈子は、このままだとずるずる延びて、結局もとの和世に戻ると言うストーリーを一番恐れていたからだった。
10/09/18 10:25更新 / アンバー
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■作者メッセージ
あ〜、なんでこうなるの?(お前がアホだからじゃ!)

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まろやか投稿小説 Ver1.53c