連載小説
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壬生沢さんとの、クリスマス。
 12月24日、超早帰りした僕たちは、6時に新宿駅南口の甲州街道で待ち合わせをしていた。事前に、ガソリン満タン車もピカピカ、出たての初代ソアラはマニアル仕様だ。
 第三京浜に入るとふと学生時代の事を思い出した。美智子を乗せた240ZGで時速210Kmに挑戦していたが、その時なんとノブ(中学のあの同級生の鈴木君だ)は、ヘルメエトをハンドルに付けながらの前傾姿勢で、ナナハン(Kゼロ)を僕らのすぐとなりで飛ばしていたのだ。
 あっという間に僕たちは江ノ島を通過、ここにからは右手にずっと夜の海が見える。材木座を抜け、僕たちの乗ったソアラはすべるように葉山マリーナに入っていった。
 こんな日に予約をしてなかった僕は、空いてる席を探してウロウロしていたが、その時だ。
 「和世のご主人?」見たことないそのメンバーはおそらく前に結婚式で会っていたのだろうが、思い出す余裕もない。「ちょっと、仕事でお客さんと・・・」うろたえながら、すたすたと2人は店を出た。まずかったなぁ〜。
 誰だったのか結局分からなかったが、和世にばれないようにと祈った。
 次に僕は、(今は無き)ホテルパシフィックに向かったが、ここのレストランも予約客ですでに満杯だった。こりゃー、何処も駄目かも。
 次の日の事も気になり、僕たちはとりあえず東京に引き返す事にした。途中、軽く食事をとったが、もう10時になろうとしていた。
 こうなったら最後の手段!今しかない。10時を過ぎると宿泊タイムでラブホテルは泊まりの客ですぐ一杯になるからだ。
 ストーリーでは、断崖から広く海が見渡せるすばらしいモーテル「サーフ・サイド・セブン」で、最高に盛り上がるはずだったが、予約ができないのはやはりモーテルだ。
 予定がくるった僕にはもはや何の作戦も無く、不細工にも美智子の頃からみんなで愛用していた地元の「ホテル荻窪」に泊まるはめになっってしまった。
 しかし、2人の本当の目的は決して豪華な食事なんかではなく、品物のいらない、なま身のプレゼント交換だったのだ。
 そしてこの日を境に「壬生さん」が「加奈子!」に変わった。
10/09/17 11:27更新 / アンバー
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■作者メッセージ
あ〜また、やってくれたねぇ〜。

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まろやか投稿小説 Ver1.53c