連載小説
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はまってみたかった、罠。
 当時、宝飾外販係長だった僕の下に、取引先社員の真ちゃん(高橋真一)がいた。真ちゃんは変に世間慣れしたやつで、女はもっぱらプロばかり、素人は苦手だった。もてないのにやはり男、女は大好きだった。
 彼のお目当ては壬生沢さんで、暇な時はいつも口癖のように、壬生沢いいなぁ〜いいなぁ〜と、まわりなど全く気にせず、惚れた自分をあらわにしていた。
 一方、同い年の壬生沢さんとまゆみは、当時大の親友でとても仲がよかった。
 全然興味がない異性も、まわりが騒ぐと少しずつ気にはなってくるものだ。
 いつもは趣味の悪い真ちゃんだったが、よくよく見れば悪くない、いやいけてる方かも?
 壬生沢さんもまゆみからさんざん聞かされた、自分が今まで経験したことのない楽しい話に、少しづつ僕に興味が湧いてきたのだろう。
 そんな僕は、その頃「壬生川さん!」と、わざと名前を間違えて呼んでいた。マイナスイメージからのスタートは、逆に後とのギャップが効くからだ。
 その後は、適度に難しいしい事務仕事をわざとたびたびお願いした。書類を受け取るたびに、「ありがとう!今度ご馳走するからねっ!」と甚だ軽く言葉を流しておく。
 それを繰り返したある日、ついにその言葉が出た。「もう、OOさんは口ばっかりなんだから!」僕が待っていた、まさにこの言葉だった。
 「じゃー、連れてってあげるよ!いつがいい?」壬生沢はまるで用意してたかのようにすかさず「クリスマスイブ、どこでもいいから・・・」まいったなぁ〜、イブかぁ〜?
 しかしこれは鉄則、断ることなど絶対できない、と言うより心が浮き浮きしてきた。
 イブまではあと2週間、折りしも最大チャンスの忘年会シーズンだが、僕にとってこれ以上のアバンチュールは必要としなかった。
 そして間もなく大望のイブの日を迎えるのであった。
10/09/16 20:32更新 / アンバー
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■作者メッセージ
クリスマスプレゼントは、OOだ。

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まろやか投稿小説 Ver1.53c