連載小説
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まゆみと、デート。
 ピッタリの時間に現れたまゆみに、僕は「とき」新潟行きの切符を渡した。今日のデートの目的地は、新潟の佐渡ヶ島だ。
 真面目でいい子なまゆみとは、通り一遍の遊びでなく、もっと大事にしたいと思っていた。
 今まで行った事がないし、これからもおそらく行く事がないだろう佐渡は、この先二人の人生がどういう展開になっても、唯一の思い出に残るからだ。
 新潟港からは、ジェットフォイルで佐渡両津まで1時間、まるで旅客機のような船内はやはりボーイング社製だ。初めてのジェットフォイルは快適で、まゆみもとても楽しそうだった。
 佐渡に着くとそこからは、やっと2人っきりになれる楽しいレンタカーだ。めざすは佐渡金山だ。
 くねくねとした1本道のコーナーで燃えてきた僕は、右ハンドルを切りながらサイドブレーキを引き、スピンターンで小さな展望台にピタツと止めた。
 眼下には壮大で綺麗な日本海、やっぱりまゆみと来てよかったなぁ。
 佐渡金山は江戸時代から戦前まで掘られていたが、旧坑道の展示物は実にお粗末なものだった。
 (今はもうないが)帰りは新潟まで飛行機だ。僕も初めて乗った10人乗りの機内は僕ら2人だけ、パイロットは肩たたきが出来るほどすぐ前だ。わざわざ預けた荷物は、ただ一番後ろに置いてあるだけ。
 結構ハードな一日だったが、帰り2時間の新幹線車内では、佐渡の珍味をつまみにのんびりとお酒が飲めた。
 適度な酔いで2人がまゆみのアパートに戻ったのは、もう夜9時を少し回っていた。
 場違いなアップライトピアノは場所ふさぎだったが、自然な流れで2人がこれから愛し合うのに、別に問題はなかった。  さ・い・こ・う・・・
 この後、まゆみと長〜い付き合いになるとは、この時2人は全く知る余地もなかった。
10/09/13 12:54更新 / アンバー
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■作者メッセージ
何だか、ややこしいけど、まだあるの?

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まろやか投稿小説 Ver1.53c