連載小説
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マメなサプライズ
 今でこそ、プロポーズや結婚式の時、突然相手が驚いて大喜びするような、サプライズを時々テレビで見かけるが、30数年前からすでに僕はいろんな仕込をしていた。
 学生時代、名古屋でナンパした1つ年上の里美とデートした時だ。彼女の車のボンネットには、フェアレディー240Zとでっかく書いてあったが、実は5ナンバー車に乗っていた。飛ばすスピードは僕とほとんど変わらない、乱暴な運転をする野生的な女だ。
 その時のデートは僕の240ZGで、夜の富士山に向かっていた。里美も音楽好きで、特にキャロルキングとユーミンがお気に入りだ。
 首都高速、幡ヶ谷インターから入った僕は、ちょうど環八をまたいだ時、カセットを入れた。「I feel earth move・・・」キャロルキングのヒット曲が続く。そして、その地点に来た時、ぴったり曲が入れ替わった。
 「中央フリーウェイ、右に見える競馬場、左はビール工場・・・」名古屋に住む里見はユーミンのこの場所を全く知らなかった。「え〜っ!ここだったんだぁ〜!感激〜!」
 一瞬の出来事だが、どれだけの準備をしたことか?当時はまだカセットは8トラックで、そんな録音機など僕以外、誰も持っていなかった。
 環八から競馬場までぴったり13Km、時速100キロで7分、48秒だ。普通なら、すぐ手前でカセットを入れ替えればいいのだが、それではサプライズにはならない。当時僕は、バカ馬鹿しい事ほど、時間とお金を費やす事に誇りを感じていた。
 そんな里美と20年程後、名古屋の出張の時に会い、思い出話とお酒で結局、僕のホテルで夜を明かしたが、それっきりで今は知らない。
 まだまだ、いっぱいサプライズはしたが、おいおい話しましょう!

 話は戻って、・・・新入社員のまゆみが社会人慣れしてきた頃、そろそろ彼女にもまき餌ををする時が来たのだった。・・・・
10/09/12 12:54更新 / アンバー
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■作者メッセージ
1人住まいの、地方育ちはグ〜。

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まろやか投稿小説 Ver1.53c