連載小説
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遊び放題の西武百貨店
 離婚で12キロも痩せた僕は、周りから癌かと疑われるほど、服がブカブカになっていた。たまたま1年後から中途入社してきた、やはり女好きの細川さんから、女にもてるなら絶対トラッドだよ!
 かくして全ての服をトラッドに変えた僕は、更に自信を深めていった。それからの僕は、仕事は当然目一杯頑張ったが、遊びにはそれ以上に力を注いだ。
 そのまま笹塚のマンションに住んでいた部屋は、甲州街道に面し、本格的なホームバー、奥にあるステンドグラスのサッシを開けると、綺麗な新宿の夜景と首都高速。天井まであるオーディオラックには、まだ出たてのビデオディスクに大型テレビと3台のモニター。まさしく遊びの殿堂、仲間内ではOOサロンとまで呼ばれていた。
 本来の女好きな性格と生ぬるい社風がすべてを可能にしていた。外商と一緒に宝石を売りに家庭を訪問するのは宝石外販課で、課長はなんと完全なホモだった。いわゆる「老け専」、年上の男性にゴロニャ〜ンが好きなのだ。だから幸いにも僕たち部下の男性には全く興味がない。(よーかった!)
 事務管理の2名以外は15人全員男。僕と女好きの細川さんは、部下で体育会系の市川に、夕方その日の飲み会のセッティングをやらせ、毎晩のように池袋界隈を謳歌していた。当然、お持ち帰りの「弁当」?は笹塚で思う存分一人で味わった。
 そんなサロンの一番の珍客は、なんとビート武の奥さんだ。友達と一緒にやって来た北野武の奥さんは、何の意味か今も分からないが、お土産に生理ナプキンを持ってきた。
 実は、奥さんも友達も外商のVIPで、二人の外商マンと市川もいっしょだった。さすがに奥さんは元芸人、カラオケ「桃色吐息」にマイクなど全く必要なく、それ以上のすさまじい声量だった。
 ・・・ドンちゃん騒ぎの翌朝、台所も風呂場もみんなの戻したゲロの山だった。
 そのころ、和世は大学を卒業し、東京大学の図書館で働いていた。自分から決して結婚を言い出すような子でなかったが、それがかえってかわいそうに思え、足掛け4年の交際にピリオドを打ち、ついに2度目の結婚を決めたのだ。
10/09/06 21:46更新 / アンバー
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■作者メッセージ
直らない、病気。

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まろやか投稿小説 Ver1.53c