連載小説
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流れどおりの、離婚。
 和世城落城後、ほぼ同じタイミングで西武百貨店に転職した僕は、今までと違い完全週休2日で、給料は多少下がったものの、休みの日数は今までの倍以上になった。
 しかし、土日はかき入れ時でとても休む事は許されなかった。残念なことに、これで妻、善ちゃんとは完全にすれ違いの生活になってしまったのだ。反面、その頃まだ学生だった和世とはいつでも自由に会う事が可能になった。勢い僕が和世にのめり込むようになった事は、あまりに想像に易い。
 入社後半年間、研修を兼ねて婦人服に仮配属された。エスエス時代とは全く正反対の生ぬるい軟派な職場に、もともと軟派だった僕は、慣れるのにそう時間はいらなかった。いやむしろ、水を得た魚だったのかも知れない。
 売場では、大体男1人に女20人位の割合で、ほとんど販売員は女性だった。
 眠る子を起こしてしまった僕は、3ヶ月目にはその内の1人を夜のドライブに誘った。夜の富士山が満月に照らされて、ベランダから大きく神秘的に見えた。
 しかし、調子にのって飲みすぎた僕は、記憶もなく寝てしまったようだ。次の日、そこから出社したが、2人の間には一言の会話もなく、職場でも口を効く事はなかった。
 6ヶ月の見習い期間が終わり、僕は予定通り宝飾部に本配属された。宝石など全く無知だった僕は、取引先に聞くなど、とにかくいろんな本を読みあさり知識を詰め込んだ。
 新入社員とは違った立場で、名刺に恥じぬよう自分なりに努力した。
 そんな生活の中、珍しく善ちゃんと同僚の人と3人で近くの居酒屋でお酒を飲むことになった。少し飲みすぎた僕は事もあろうに、初めて会う同僚の前で夫婦生活を愚痴ってしまったのだ。
 後で考えたら、まさに朝帰りの張本人だったに違いない。その後、まもなくして別れ話が出たが、どちら側からも、拒む理由もなく、すんなりと話し合いの離婚が成立した。3年間の2人の結婚生活はこうして幕を閉じた。
10/09/06 20:13更新 / アンバー
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■作者メッセージ
僕は自分の事は棚に上げ、「女なんてもう信用しない!」と本当に落胆しそれから短期間で12キロ痩せた。

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まろやか投稿小説 Ver1.53c